バイシャ拍手お礼小話
               「春夏秋冬・ミアとナルナ編」



 <春>

ナルナ「春眠暁を覚えず」

ミア 「なんだ、拍手の礼も無しに不躾だぞ」

ナルナ「ありがとうございます」

ミア 「それでどうしたんだ。ナルナは眠いのか?」

ナルナ「何かしら文集でも読んで情緒をつけろと言ったのはお前・・・もといミア様でしょう」

ミア 「季節感も風流も無しに無感動なのは人間として物悲しいからな!」

ナルナ「以前貰った球根を食べてしまったのが、そんなに気に入りませんか。文集ちゃんと命令通り暗記したじゃないですか」

ミア 「気がすむわけないだろうが」

ナルナ「タマネギだと思ったんだよ」

ミア 「なんで王族がタマネギ1個プレゼントすると思った?ナルナはあれだな、食い意地張りすぎだ。前から思ってたが貰った物を全て食べ物だと思うのはアレか?餓えてるのか?」

ナルナ「花と姫がどうしても結びつかなかったもんで。物貰ってもあんまり趣味じゃないので嬉しい物を想像すると食べ物になるんですよ。ヌイグルミとか正直、俺が持っててキショイと思えよ」

ミア 「ゴセルバがナルナの部屋は殺風景だと言うから・・・でも、ちゃんとイメージにあったヌイグルミだったろ」

ナルナ「ほぉ・・・ミア姫の中では俺のイメージが羊や兎になってるっていうんですか」

ミア 「いや?か弱くて可愛い者をペロリと食べちゃう悪い狼だな」

ナルナ「それもゴセルバの入れ知恵ですか」









 <夏>

ミア 「乾く太陽の暑き季節、拍手1つでも心の恵みの雨だ」

ナルナ「拍手ありがとうございます」

ミア 「夏は騎士達が訓練で日焼けする時期なわけだが・・・ナルナは相変わらず青白いな」

ナルナ「焼けないようにしてますから」

ミア 「長袖に長ズボン、黒ずくめ・・・暑苦しい。暑苦しすぎる!だいたい、日焼け止めしてるなんて女か、お前は」

ナルナ「逆に日焼けで皮膚の皮がめくれてるミア姫は、少しぐらい紫外線を避けるべきでは?将来シミが出来てから泣いても遅いと思いますけど」

ミア 「兜をかぶりながら鍛練しようものなら蒸れるは汗臭いは熱がこもるはで最悪だった」

ナルナ「精神修行不足」

ミア 「お前、後で訓練所の武器庫裏に来い」

ナルナ「仕事があるので一昨日行きます」

ミア 「その服ひっぺがえして太陽の下に放りだすぞ。全身真黒になるまで足止めして夏男になれるよう協力してやろう」

ナルナ「真っ赤に焼け爛れて数日間痛みでのたうち回るだけですので、断固拒否ります」

ミア 「肌の修行不足なだけだ。その内きっと黒になる」

ナルナ「なるわけねえだろ」

ミア 「だってカクウはなったし」

ナルナ「他人事だと思って適当なことを言わないで下さい」









 <秋>

ナルナ「拍手ありがとうございます」

ミア 「前に礼を言えと注意はしたが、お前ひとまず言っときゃいいやみたいな・・・」

ナルナ「この頃トキヤの奴が、カクウ様が食欲の秋と言って料理をどっさり作るから食べきれないと俺の部屋に置いていくんですよ、頻繁に」

ミア 「ナルナ、話に前置きというものをつけろ。脈絡のない・・・まあいい。良かったじゃないか。料理人がいないからって面倒がって保存食と酒ばかり飲んでる男には健康的で」

ナルナ「まあ、体重が結構増えました」

ミア 「・・・給料は払ってるはずだ。ちゃんと食事しろ」

ナルナ「余りを食べている俺がコレならトキヤは元より、力クウ様は一体どれぐらい食ベているのかと体型から予測してみたんですが」

ミア 「最悪だ、ナルナ」

ナルナ「あまり違いが分からないんですよ。相変らず良い乳もといノーマルな腰ですし」

ミア 「ナルナはいつもカクウのどこを見てるんだ、どこを」

ナルナ「全身くまなく平等に」

ミア 「それはそれで・・・」

ナルナ「俺も見た目はあまり変わってませんし、少しぐらい体重が変わっても外見は変化するもんじゃないなと思ったわけです」

ミア 「まあ、ナルナが人の変化に疎いのもあると思うが」

ナルナ「しかしその原理でいくと近頃肉がついてきたミア様は夏より少しではなくかなり肥えたということに」

ミア 「・・・・・」

ナルナ「・・・・・」

ミア 「カクウが食欲の秋と言って夜食まで作り置きしていくんだ。おいしくって・・・」








 <冬>

ミア 「1年経つのが早いと感じるのは、思い振り返えればまだ何かできたのではと悔やみにも似た焦りを感じるせいか。大切な時間を拍手に使っていただき、ありがとうございます」

ナルナ「そんな殊勝っぽい嘘っぱちを。冬だからって雪だるまみたく着込んで火の側で震えてる時間が無駄だろ。体を動かしたらどうだ」

ミア 「寒いじゃないか!お前だって夏が苦手なように、私が冬を苦手として何が悪い!」

ナルナ「夏には人に散々文句垂れて、このていたらくは悪くないのか」

ミア 「季節に逆らった格好するからだ!っていうか、お前は気を抜きすぎだぞ。敬語、敬語」

ナルナ「ここでは他の連中が出払ってるから敬語使わなくても良いことに最近になって気づいた。注意も減俸も無いし問題無し。ごろ寝、あぐら、腕組みしようが耳ほじろうが」

ミア 「今更!?そして、くつろぎ態勢全開か!!」

ナルナ「ところで俺が冬が好きみたいに言ってたが、宿無し時代を経験しているから寒さに強いだけで別段好きなわけじゃない。夏も嫌いじゃない。昼間の日差しが嫌なだけだ。ミアと違って暑かろうが寒かろうが精神力でなんとでもなるからな」

ミア 「私だって暑いのは大丈夫だ。寒いのだって活動してる時には平気だし」

ナルナ「贅沢な暮らしなら好き嫌い言っていられても、平民以下はどの季節でも文句を言ってたら生活やってられんぞ。例えばトキヤぐらい生活基準を下げたとしてミアには耐えられやしないだろうな。真冬に水で体を洗ったり出来ないようじゃ」

ミア 「真冬に水で!?」

ナルナ「風呂屋に毎回行けるわけじゃないからな。時には庭先の井戸水でそうすることもある。家も造りが荒いし木も古いから隙間が出来る。お前に言わせりゃ馬屋で冬を過ごすようなもんだな」

ミア 「馬屋で!?」

ナルナ「俺はガキの頃は外だったけど。家が駄目なら服を着込めばと思うかもしれんが、物が常に不足している貧民に服を大量に持てる甲斐性は無いからな。年間通しで薄いボロ服を1枚2枚持ってるぐらいが一般的だな。連中からすれば着ている服が一張羅だ」

ミア 「冬も薄着で!?冬に、そんな」

ナルナ「なんて、な。貧民は環境に恵まれちゃいないが、なんだかんだで生活の知恵を身につけているんだ。井戸水をたき火で暖めて使うなり、そもそも体を洗うのを控えたりしているだろうよ。そんな馬鹿正直に寒い思いをし続けるわけ・・・・・・ミア?」

ミア 「たかが氷水なんてええええ!!」

ナルナ「・・・・・待て、早まるな!!」





 〜珍しくあとがき〜

 HP開始より2回目の季節巡りが終わりました。1年目は実にこっそりサイトを過ごしていたので本格化してからは1年ですが、こんなに経ったか。まだ充実しているとは言い難いですが、頭の中の物語をこうやって形に出来るだけで楽しいです。

 次回春夏秋冬シリーズは兄(リの字)と弟(ゴの字)の子育て双子でいきます。

 っていうか、原作の方がいっこも進んでない。もうバイシャシリーズの方を原作と呼んでも良いだろうか。