改方8





 ペットには名前があって然るべきだろう。ポチ然り、タマ然り、犬とも猫とも呼ばないではないか。そういう呼び名をかえって可愛らしく感じる人がいないわけではないけれど。


 犬や猫に留まらず落ちていた雀からワニ亀まで拾ってくる親戚が、飼い手に困って何度か葛城家でも引き取らされたものだけど、名前は大体が妹によってつけられていた。そして僕が面倒をみるという。特殊なネーミングセンスで絶妙に人の笑顔を驚愕に変える妹と違い僕には一般的で流行色の強いものしか思い浮かばない。だがこれには妹の真夏の興味を引かなかったらしく、ついぞ個体名の無いままに長年の時が過ぎさった。


 住んで十数年、真夏が名付けないというのならば僕がコレに名前をつけなくてはならないのではなかろうか、そろそろ。


「そのアロエにか!」


 元の髪の色が混じって今日も元気に農業に励んでいるプリン少年は、やはり働きつつ鎌で僕にツッコんでくる。これこれ、人の思考に鎌をはさむでないよ。中途半端はお兄さん許しませんよ。ちゃんと横槍の名の通り


「いねえよ、槍なんて持ってる一般日本人!いや、聞かねえぞ。この町なら持ってる奴いそうとか聞かねえからな」


 確かに、不名誉な事にキングオブ物騒ランキングで堂々の3位入りを果たしている我が故郷なら


「そんなランキングあるの!?」


 槍の1本や24本までならあるやも。


「拳銃見た後の嫌なリアル!計算したみたいな中途半端な数字で人の恐怖心煽んな」


 携帯片手にいつも通り畑の裏で小学生をからかいつつ、難題に唸ってみる。長い間、打ち続けているメールに興味を持ってプリン少年は僕の手元に好奇心を向けている気配を感じる。ちなみにゲームをしているのではないしエロサイトに繋いでいるわけではないよ。


「聞いてねえよ!」


 実際問題、小学生と会話しながらエロ動画を楽しむなんて高度なマネは大変であろうし。


「止めろ!耳が腐る!!」


 例によってラジオからニュースを流しながら畑仕事をする小学生。足元から聞こえてきた臨時ニュースで目をアナウンスに向ける。


『人質の安否は未だ分かりません。銃声と悲鳴から誰かしら撃たれたという事が考えられるのですが警察は、犯人を説得することができず正面玄関に貼り付けられている子供を標的に立てこもっています。ここ、翼ノ草市では銀行強盗は今年に入り既に2回目にのぼり』 


 プリン少年はラジオを持ってドブ水路の反対岸まで寄って突き出してくる。


「おい、撃たれたって。のんびりしてていいのかよ、改方」


 もちろん、ちゃんと動いているさ。ほら、こうやってメールで連絡係り。


『以前、動きはありません。しかしココ翼ノ草はヒーローの如き活躍で町を沸かせているあの改方の町であります。この膠着状態、彼らはどう関わっているのでしょうか。警察が囲んでいる場には出張らないという情報も入っていますが、このままでは第2の銃撃も』


「・・・おっさん、本当に行かねえの?」


 少年はそんなに僕が野次馬根性の逞しいお兄さんだと思っているのかい?


「いや、警察が役に立たねえんだから、おっさんが銀行の窓から侵入して強盗をやっつけるとか」


 さすがにこっそり苦笑する。


 翼の形をした特殊なこの翼ノ草市で、端っこに住まう僕らの家と事件が起きた銀行は真反対の翼の先にある。向かえば1時間は確実にかかってしまったりする。同じ町であるというのにね。それにあくまで僕らは警察が出動している事件にまで手は出さない。公務の手から零れ落ちた危険に警戒し、守り合う。それが本当の自警団の姿だ。


 派手な事件と活躍でパフォーマンスが過ぎているのだろう。僕が一人でそういうマネをするのはともかく、高山少年のように真似をしかねない若者がいるは事実だし、最近その事について物凄く非難を受けたばかりでもっと地味に動くという誓いまでするに至った。


 代わりに怒られているのは誰なのかと言われてしまえば感謝こそすれ反論は難しい。これを少年に説明するのも難しい。


 しかしまあ、プリン少年。前回僕が叱られた内容を引用すると火事場の泥棒なーんて言うだろう?こういう時の町は今までの傾向で警戒が薄い。本来、改方は裏方で事態の混乱を防ぐためにいて僕みたいな連絡係が一時的にも抜ければ、改方も警察と一緒に正常には機能しなくなってしまう。本末転倒というわけさ。それに警察が包囲しているところに改方が出る幕じゃない。あくまで火の回り注意役、手の回らないところの孫の手、本当は非戦闘一般市民。


 僕が言えた口ではないけれど、協力をするにしても警察の邪魔になって潰しあうように系図になるのは絶対に避けなきゃいかんのさ。


「でも撃たれたかもしれないのにジッとしてるなんて、なんか、らしく無いって、言うか」


 ラジオにかがんで映像が見えるわけでもないのだけれどプリン少年は唇をつぐんで眉根を寄せた。少年には見えているのかもしれない。色々な大事なものがね。僕もバイブレーションが続く自分の携帯に祈りを込めて両手で握り目を閉じる。それから念を込めたメールを開いて僕は世を儚むプリン少年に微笑んだ。


『カメラを!銀行のドアが開きました!?子供が走ってきます。次々に人質が開放されていきます。どうしたのでしょうか!?警察が銀行に向かっていきます』


 一瞬間をおいてラジオは盛り上がりを見せる。


『あ、銀行から出てくる彼女!あの銀行員は確か改方の副長官で以前にもインタビューでお会いした事があります!!事件の只中に改方の舞阪さんが、これは彼女が何らかの動きをしたものと思われます。お話を!!!』


 呆けて口を開きっぱなしにした少年と、興奮するラジオ。地味なパフォーマンスっていうのは、どうすればいいのやら、だね。










 中本女史は拳を振るう。


「既に強盗が引きこもって6時間、警察は動くに動けず発砲はあれど目の前に怯える子供を盾に突入も出来ず。毎日が凶悪事件との対決っていう翼ノ草警察が歯噛みしている中では改方副長舞阪さんの人名優先の冷静な説得劇なのよ!」


「そのニュース朝に見たわ。逃げ道を教えて強盗逃がしちゃったんでしょ。身元も分からない状態で」


 昨日の銀行強盗は銀行のトイレから隣のビルに移って裏口から逃げおおせたそうな。その逃走ルートを洩らして強盗から銃撃を受けた被害者の早期開放を計った。その交渉に乗って怪我人と強盗は無事に建物から脱出したという流れだ。


「この間の公園無差別乱闘事件みたいに地に沈めてくれれば良かったのに。今日は仕事出てきたくなかったんだから」


 野放しの強盗の行方は絶賛おまわりさんによって草の根分けて捜索中となっているのだよ。


 テーブルの人数分だけ水を運んで配りながら久本さんが口を挟むと中本女史は隣に座った久本さんの頭を握りつぶす。


「痛っ!痛い痛い痛い!!」


「何言ってんの、この自己中年めが。銃で撃たれた人間が今も重症で命も危ういところなのよ?警察が突入する動きも無い中で他にどうやって開放できたっていうのよ。番頭の剣塚みたいなのが町にいくらもいるわけないでしょうが」


「ちょっとおおお!?あんたの握力で頭がスイカみたいに割れるんだけどおおお!!それより誰が中年だ、三十路仲間があああ!!」


 別のテーブル、で恐れおののく僕の隣の柿本さんが携帯のワンセグに目を戻す。例の事件の速報をテーブル回りの人達が真剣に覗き込んでいる。別の地域なら学校閉鎖だろうが、本日も最大に警戒レベルを上げて警護されつつも小学校は通常運営だ。そうでないと1年のほとんどが閉鎖式になってしまうという感じ。


 携帯を開いたままオムライスを口にかきこむ柿本さんの後ろから画面を見ている新山さんは溜息をつく。


「でかい金庫を狙う輩はまだいいさ。警察が地の果てまで追いかけて捕まえに行くんだしよ。それよか寝ている間や留守にしている間の空き巣なんかの方が気が気じゃないね、俺は。先週の強盗事件は解決したけど、子供だけがいる時に狙う連中もいるだろ」


 スプーンを柿本さんは新山さんに向けて拳をテーブルに叩きつける。


「引ったくりだって性質が悪いぞ!こづかい日の直後だったんだ。カードや免許書だって止めるはめになって、どれだけ嫁に殴られたか」


「僕の友達も引ったくりやられて、高い財布だったからショック受けてましたよお。少ない給料で無理して買ったってのにねえ。家に置いとくのも怖い。持ち歩くのも危険。だったらどうしろっちゅう話っすよねえ?」


「改方のお陰で暴力系のチンピラは身を潜めたもんだけどなあ。次は空き巣とか引ったくりに力を入れるっちゅうのはどうよ?なんちゃって、ここで話してても始まらないわけだども」


 柿本さん、柿本さん。


「ん?なんだ静かだと思ってたら葛城」


 肩を叩いて手話の通じる人事の柿本さんに彼の携帯を手渡した。改方のHPで町の声をコメントできるようになってるから、そこに依頼してみたらどうでしょう?ってな感じの宣伝と共に。










 中学生の集団に指を差された。


「あー、葛城先生だ」


 はっはっは、先生は止めてくれい。


「何言ったか分からんかった」


「口のきけない改方の人だ。俺のクラスでも授業やらんのん?」


「窓から飛び降りた人だ」


「警備員のおっさん捕まえた兄ちゃんだ。張り込みしてんのん」


 そこに鍬を肩にかついだプリン少年が通りかかり、いかにもゲッという顔をした。中学生は次にプリン少年の方に指を向ける。


「井坂だ。今日もモサい」


「小学生が金髪かよ」


「いやあれプリンじゃね?」


 黒に戻す過程だよ。もうすぐ中学生になるから指導室行き対策だね。小学校はまだ規則が緩いけれど、中学校っていうのはアレ駄目、コレ駄目が多いから。公立だったら僕の母校な規則が厳しい翼ノ草中学だしね。僕の父の従兄弟な叔父さんが勤める私立では金銀茶赤と色とりどりに髪を染めた学生が溢れていて自由な校風で個性溢れる若人を育てているんだ。その叔父さんからして「先手必勝、やられる前に脅しとく。次はピンクなんてどうだろうか」とか正月に言ってたけど、今頃何色になっていると思う?


「おっさんの一族はそもそもカラフル過ぎるんだよおおお!!」


「なんだ?なんの会話なんだ」


「あの小学生、手話にツッコミいれてるぞ。2人の世界にも程があるだろ。字幕出せよ」


「通訳しろよ」


 なんて言ってる間に視線を向こうのマンション前の玄関先へ向ける。そこに人が集まっているのが見える。その中で一際目立っている人物が2人いる。髪を一つに束ねて携帯を片手にブロックで囲んでいる花壇脇に座って足を組んでいる女性、その隣に立って辺りを見回している筋肉がよくついた頑丈で騒がしさを好みそうな男性だ。その回りにいるのは改方の腕章をつけた、つまり改方の集まりなわけだが。


 小中学生もその集まりに気がついて目を向けた。


 携帯を閉じた女性が立ち上がり、一段高いブロックに足をかけて登って改方を見回した。


「呼びかけに応えていただき感謝します。そろそろ時間が惜しいので始めさせていただきしょう。今回、飛脚以外の岡っ引きにも集まっていただいたのはHPをご覧の方なら存じていると思われますが強盗事件の事もあり、市民から空き巣や引ったくりへの不安が訴えられました。以前から問題としてあげられていた件ですが、しばらく本件を強化する事に決議となりました」


 女性が話しているのを見つめる集団の中でキョロキョロしていた側に立つ男性が、こちらのお子様一団に目を留めて首を傾げる。特に好奇心の目が並んでいると見て取った男性は肩をすくめて女性に目を戻す。


 プリン少年が口に手を当てる。


「あ、番頭兄ちゃん」


「なあ、あの姉ちゃんが改方の一番偉い奴か?」


「今回直接指揮を取るのは私、舞阪になります。私の逃がした強盗を追うために現在警察の手は常よりも不足しています。この隙をついて横行するであろう犯罪の手を私達の目で止め」


 プリン少年がアッと声を上げる。


「舞阪、改方の副長じゃん!ニュースとかで一番流れてる名前」


「マジで」


「うっそ、普通っぽい」


 見る目の無いおガキ様ではないか。美人なお姉さんに向かって普通っぽいとは。


 身をかがめて中学生達に目を合わせる。学校帰りだと分かる制服姿だが、小学生と違って教師も親もつかずに下校しているらしい。集団下校をして徐々に人数が減った結果の集まりと言った所かな。これの不味い所は最後の数人になった時点で集団下校じゃなくなっているという部分なんだよね。中学生の帰宅時間はまばらだから改方に引っかからなかったのかな。


 この場合、エンカウントした大人の改方は自宅まで見送る決まりだ。中には反抗期の真っ只中である中学生が逃走したりするから、無理には実行しないわけだけど?


 後、プリン少年。薄暗くなってきてるから1人で出歩かない。町中が厳戒態勢中だっていうのに君はいつも仕事熱心なんだから。おじさんが来るまでは僕がいるから、とりあえず今は一緒についておいで。僕の体は半分に分けて行動できないので。


「行動できてたまるか。俺は良い。畑に強盗なんて来ない。改方の仕事に参加しに行く途中だったんだろ。たまには集団行動してこい、この引きこもり」


 はあ悲しいよ、空陸くん。君はいつからそんな僕アンチになったのかなあ?昔は春先お兄ちゃん、お兄ちゃんって通ってくる君を日曜の寝惚け眼の朝ながらに可愛らしいなあって思ってたのにね?


「なんて言ってるのか分かりません」


 そのプリン頭を撫で回してやろうか、というのは次回にして。


「触るな」


「井原の1人劇みたくなってっから。それはそれで面白いけど、すぐ飽きるんですけどー。家にも帰りたいんですけどー」


 原西くんらを引率したいから、プリン少年強制捕縛。素早く腕を抱え込んで背中に背負いこむと悲鳴をあげた。小さい体で暴れたところで逃がさんよ。


「おんぶ!?ちょ、おんぶは止めろー!」


 しばらく離せコールはあったものの、中学生らはプリン少年を無視することに決めたらしく関係なく質問を繰り広げる。


「さっきの改方の集会って一体なんなわけ?銀行強盗を捕まえんの?」


「は・な・せー!このおっさん!!ちっくしょう、片手かよ、馬鹿力!」


「舞阪さんと剣塚さんって人ばっかり目立つけど、なんで凄いのに葛城先生って目立たんの?」


 中学生とプリン少年のステレオが耳を鳴らす。


「テロリストと戦ったってマジなの?原西の嘘都市伝説とか思ってたけど、中舎から高舎に跳んでくとこ見たってダチが何人も言うしさあ」


 いやあ、質問は1個ずつにしなさいな。ただでさえ答えが通じにくいってのに、僕は聖徳太子か。


「離せぇぇっ。後、質問は1個ずつにしろよ、返事できねえだろ」


 騒ぎつかれてプリン少年はその律儀さから僕の手話を自動通訳機の如く伝えるものだから「その手話力は何処で身につけられるんだ」というプリン少年への質問に変じる。


 僕が目立たないのは喋れないから。目立つことも得意としないし、改方の個々が目立つ必要はないじゃないか。でもこの意見は僕のものだから象徴とする人間は必要だっていう事であの2人は派手なパフォーマンスをしているらしいね。適材適所さ。


 この町には犯罪が多い。見て育ったものに子供は影響される。


「翼ノ草育ちは質が悪いって言うのかよ」


 まさか!僕はこの町も住んでいる人も好きさ。平和を乱したくなる衝動を高めている要因を無くしたいんだよ。


 だから、悪に憧れもすれば、ヒーローに憧れる人間もいるだろう?


「特撮ヒーローみたいな感じ子供とかを正義に洗脳するために副長と番頭がいるってことかあ?せこい平和運動だなあ」


「そうかあ?俺は葛城先生に憧れて正義ってのも良いかなって思い始めたけどな」


 そう。


 照れ笑いが漏れる。


 なら、君と会えて良かったな。将来、原西くんがどうなっていくか楽しみにしていよう。


 プリン少年は何故か押し黙った。


「おい、井原。なんて言ったんだよ葛城先生」


 顔をそむけてプリン少年黙る。うーん、翻訳機扱いがいい加減に頭にきたかな?無理やり引きずり回してスマンね。










 明かりを抑えた夜半にパソコンを触っていると、画面にメッセージが届く。


『子供と遊んでいないで、助けてくれませんか?もう、貴方が強盗を捕まえてきてくれれば良いんですよ。貴方なら何か超常現象でも起こしてやれそうな気がしてきました。そもそも同じ仕事内容なのに、私の方が業務量が多い気がしてならないのですが』


 おやおや、かなりお疲れなようだね。仕方ないか、引ったくりや空き巣への人数の投入は増えたにも関わらず高校生以下の勇敢なお子様達には今回は参加を控えてもらっている。人手不足で仕事量は倍増だからな。


『お疲れ様。ちゃんと働いているさ。連絡事項見てくれているだろう?』


『私が苦労してやっている事をサラリとやっておいて、戯れる時間が残っているのが腹立たしいんですよ。もうそれこそ戯言は以上にしておきます。今日は外出を控えるように言われている改方の高校生達が勝手に見回りをしているのを見かけました。見回りのコースこそ知らないようですが、注意しても使命感に燃えてしまって。まだ強盗騒ぎも収まっていない時期に普段通りに任務をこなすつもりのようでした』


『その子達なりに改方を背負っているんだね。注意しても駄目なら、あまり厳密に見張っているような態度は見せないようにした方がいいんじゃないかい?隠れてやらせた時の不測事態が怖く思う』


『町全体を操作できるとは思っていませんが、組織内くらいは統制を取りたいものです。それこそ改方の長官がやろうと思えば出来ると思っているのですけれど、私は』


『どうだろうねえ。でもあまり組織めいて自由な選択や意思が消されるのはあまり僕の好みではないかな。自警団っていうのは、自らの志願がもっとうの町を愛する集いのつもりだから』


 コーヒーで喉を潤す。


『何か悩んでいるのかい?辛いなら休憩したって構わないよ。表舞台で目立って来いっていうものでなければ、君の分の仕事を請け負うから』


『大丈夫です。私だって自ら志願した改方ですよ。長官の示した平和な町に共感し、尊敬する長官のために、長官による指示の元、長官の手足になって仕事後に無給で自警団やってるわけですからね』


『関係の無い話で申し訳ないのだけれど、長官や副長っていう表現は軍隊っぽくて好きになれないんだよね』


『何をとんちんかんな事を。改方の長は昔から長官と決まっています。貴方が不満に思っても変更なんてされませんのであしからず』


『あははははは』


 窓の外を見回りが列をなして歩いているのが目に入る。火の用心とはさすがに言って回っていないけれど改方の腕章が蛍光色で夜の闇の中で主張していた。



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