野球しようぜ 2




 クレープをくわえて2人分の料金を支払いながら灯はプリプリと怒っていた。


「大体、マネージャーのノブちゃんがなんで選手に混じってるの?これは騙まし討ちだよ、ノブちゃん。野球なんて8人でやればいいのに」


「できるか。しょうがないじゃない。いや、しょうがないで済ませたくないけど」


「だって、マネージャーだって嫌だったんだよ。クラブで時間とられて私が構ってもらう時間が減るんだもの」


「あんたの大好きな中山先生に文句言いなさいよ。マネージャーがどうしても必要でとか詐欺まがいの勧誘してきたの、あのおっさんなんだから」


 私はアカリから受け取ったクレープに噛り付く。


「ぬう、中山先生め。試合が近づいてきたら、またロボットについて質問攻めの刑にしてやろう。次のロボ大会には一緒に出場しようって勧誘してるんだ。今度はBB弾の威力をあげて4丁拳銃で会場を驚愕と爆笑の渦に」


「おっさんの友達じゃなくて、あんたもうちょっとまともな女友達作りなさいよ。その内、中山と援助交際してる女子高生がいますとか噂がたったら堪らないわ」


「ふふ・・・ノブちゃんは厳しいね。女子高生とか、どうやって話しかけたらいいかまるで分からないよ」


「ちょっと、女子高生」


「あ、でも今度の日曜に有川君がクラブをサボるから遊ぼうって誘われたよ!」


「あいつは止めなさい」


「???」


 サルみたいに首を傾げて「友達作れと言っといて?」という心の声ダダ漏れな灯が頭の上にハテナ飛ばしまくってる。頭は良いけど人を見る目と空気が読めないのが欠点の子だ。昔から長い物に巻かれるの苦手、苛められっこに普通に話しかける、面倒を押し付けられても即座に承諾。大丈夫か、この子と思ってちょっとした良心働かせた結果がこの関係。


 ずるずる小学校から続く友人関係で恋人だとからかわれ続けてるけど、この頭の弱い秀才メルヘンは私に恋人が出来なければそれで満足なのよ。友達を取られたくないぐらいのノリなんだから。


 溜息をついて灯の食べかけのプリンクレープを私の食べかけのカスタードアイスクレープと取り替えた。


「もしもバイト先にカッコいいなと思う男がいても、まずは私に教えてね。そこまで面倒見たくないけど」


「心配しないで、ノブちゃん。バイトは愛するノブちゃんのために出稼ぎしてるだけだよ。マネージャー業で一緒にバイトできなくなった今、私が稼がなきゃ満足に遊ぶこともままならないわ!」


「貢がれてるなあ、私」


 乙女心っていう内面隠して生きてる私にはピッタリな友達だけどね。




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